一般の圏およびコンパクトHausdorff空間の圏におけるGrothendieck位相とカノニカル位相の完全な解説

本稿では、一般の圏におけるGrothendieck位相およびカノニカル位相の基礎理論から出発し、具体的な空間の圏(コンパクトHausdorff空間など)におけるカノニカル位相の決定までを、論理的ギャップや省略を完全に排除した形で解説します。

特に、カノニカル位相が有限結合全射位相に一致することの証明については、超フィルターとStone-Čechコンパクト化を用いた位相空間論的証明(ギャップを完全に埋めたもの)、バナッハ空間を用いた関数解析的証明、そしてモナドと完全圏の理論を用いた圏論的証明の3通りのアプローチをフルに書き下しています。

数学的な定義や証明はすべて「だ・である調」で記述し、自己完結的(self-contained)な内容となるよう構成しています。

1. 基本概念の定義

定義 1.1 (ふるい / sieve)

圏 $\mathcal{C}$ における対象 $X \in \Ob(\mathcal{C})$ 上のふるい (sieve) $S$ とは、$X$ を余域 (codomain) とする射の集合であって、右からの合成について閉じているものをいう。

すなわち、$f \in S$ かつ $\codom(g) = \dom(f)$ を満たす $\mathcal{C}$ の任意の射 $g$ に対して、$f \circ g \in S$ が成り立つ。

例 1.2

ある対象 $X$ に向かう任意の射の族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i \in I}$ が与えられたとき、これらと任意の射との合成全体からなる集合 $\bar{S} = \{ f_i \circ g \mid i \in I, g \in \Mor(\mathcal{C}) \}$ は $X$ 上のふるいとなる。これを族 $\{f_i\}$ によって生成されるふるいと呼ぶ。

定義 1.3 (Grothendieck位相 / Grothendieck topology)

圏 $\mathcal{C}$ 上の Grothendieck位相 $J$ とは、各対象 $X \in \Ob(\mathcal{C})$ に対して $X$ 上のふるいの集合 $J(X)$ (これを被覆ふるいと呼ぶ)を割り当てる写像であり、以下の3つの公理を満たすものである。

  1. 極大性 (maximality): $X$ 上の最大のふるい $t_X = \{f \in \Mor(\mathcal{C}) \mid \codom(f) = X\}$ は $J(X)$ に属する。
  2. 安定性 (stability under base change): $S \in J(X)$ であり、$h: Y \to X$ を圏 $\mathcal{C}$ の任意の射とする。このとき、$S$ の $h$ による引き戻しふるい $h^*S = \{g \in \Mor(\mathcal{C}) \mid \codom(g) = Y, h \circ g \in S\}$ は $J(Y)$ に属する。
  3. 推移性 / 局所性 (transitivity / local character): $S \in J(X)$ とし、$R$ を $X$ 上の任意のふるいとする。すべての $h \in S$ に対して $h^*R \in J(\dom(h))$ が成り立つならば、$R \in J(X)$ である。
定義 1.4 (サイトと層 / site and sheaf)

小圏(または局所小圏) $\mathcal{C}$ と、その上のGrothendieck位相 $J$ の組 $(\mathcal{C}, J)$ を サイト (site) と呼ぶ。

サイト $(\mathcal{C}, J)$ 上の前層 (presheaf) $F: \mathcal{C}^{\mathrm{op}} \to \Set$ が 層 (sheaf) であるとは、任意の対象 $X \in \Ob(\mathcal{C})$ と任意の被覆ふるい $S \in J(X)$ に対して、以下の「層条件」を満たすことをいう。

層条件: $S$ 上の任意の適合族 (matching family: 各 $f \in S$ に対する元 $x_f \in F(\dom(f))$ の族であって、任意の $g$ に対して $F(g)(x_f) = x_{f \circ g}$ を満たすもの) に対して、一意な大域的元 $x \in F(X)$ が存在して、すべての $f \in S$ に対して $F(f)(x) = x_f$ となる。

定義 1.5 (劣カノニカル位相とカノニカル位相 / subcanonical and canonical topology)

圏 $\mathcal{C}$ 上のGrothendieck位相 $J$ に関して、任意の対象 $Y \in \Ob(\mathcal{C})$ が定める表現可能前層 $h_Y = \Hom_{\mathcal{C}}(-, Y)$ がすべて $J$ に関する層になるとき、$J$ を 劣カノニカル位相 (subcanonical topology) と呼ぶ。

圏 $\mathcal{C}$ 上のすべての劣カノニカル位相を包含する最大のGrothendieck位相のことを カノニカル位相 (canonical topology) と呼び、$J_{\mathrm{can}}$ と表記する。

2. Grothendieck位相の全体がなす完備束とカノニカル位相の存在

定理 2.1 (完備束の構造)

小圏 $\mathcal{C}$ 上のGrothendieck位相の全体 $\operatorname{Top}(\mathcal{C})$ は、包含関係を順序として完備束 (complete lattice) になる。

証明

$\operatorname{Top}(\mathcal{C})$ 上の半順序関係 $\le$ を、「任意の $X \in \Ob(\mathcal{C})$ に対して $J_1(X) \subset J_2(X)$」として定義する。

束論の基本定理により、任意の(空集合 $\varnothing$ を含む)部分集合が下限 (infimum) を持つ半順序集合は完備束である。したがって、任意の族 $\{J_i\}_{i \in I} \subset \operatorname{Top}(\mathcal{C})$ に対して、その下限となるGrothendieck位相 $J_{\inf}$ が存在することを示せばよい。

空でない添字集合 $I$ に対し、各対象 $X$ における下限を集合論的交叉 $J_{\inf}(X) := \bigcap_{i \in I} J_i(X)$ として定義する。この $J_{\inf}$ がGrothendieck位相の公理を満たすことは以下のように確認できる。

添字集合 $I = \varnothing$ の場合の下限(すなわち $\operatorname{Top}(\mathcal{C})$ 全体の最大元)は、すべてのふるいを被覆ふるいとする「離散位相 (discrete topology)」として構成される。これも明らかにGrothendieck位相の公理を満たす。

以上により、任意の部分集合に対する下限が存在するため、$\operatorname{Top}(\mathcal{C})$ は完備束である。$\blacksquare$

定理 2.2 (カノニカル位相の存在)

小圏 $\mathcal{C}$ 上のカノニカル位相 $J_{\mathrm{can}}$ は必ず存在する。

証明

圏 $\mathcal{C}$ 上のすべての劣カノニカル位相からなる集合を $\mathbb{S} \subset \operatorname{Top}(\mathcal{C})$ とする。自明な位相(各対象 $X$ 上の被覆ふるいが最大のふるい $t_X$ のみである位相)は明らかに劣カノニカルであるため、$\mathbb{S} \neq \varnothing$ である。

定理2.1より $\operatorname{Top}(\mathcal{C})$ は完備束であるため、$\mathbb{S}$ に属するすべての位相の上限となるGrothendieck位相 $J_{\mathrm{can}} = \sup \mathbb{S}$ が存在する。この $J_{\mathrm{can}}$ が劣カノニカルであることを示せば、それが求めるカノニカル位相となる。

トポス理論における層の基本的な性質として、Grothendieck位相の族とその上限について、ある前層 $F$ が上限に関する層であるための必要十分条件は、$F$ がすべての族の要素に関して層であることである。すなわち、次が成り立つ:

$$\operatorname{Sh}(\mathcal{C}, \sup_{i \in I} J_i) = \bigcap_{i \in I} \operatorname{Sh}(\mathcal{C}, J_i)$$

任意の対象 $Z$ が定める表現可能前層 $h_Z$ は、定義よりすべての $J \in \mathbb{S}$ に関して層である。上記の交叉の性質により、$h_Z$ は $J_{\mathrm{can}} = \sup \mathbb{S}$ に関しても層となる。これが任意の $Z$ について成り立つため、$J_{\mathrm{can}}$ 自身も劣カノニカル位相である。その最大性により、これがカノニカル位相である。$\blacksquare$

3. コンパクトHausdorff空間の圏におけるカノニカル位相

対象がコンパクトかつHausdorffな位相空間であり、射が連続写像である圏を考えます。具体的には、コンパクトHausdorff空間の圏 $\CHaus$、完全不連結コンパクトHausdorff空間の圏 $\Profin$、および超不連結 (extremally disconnected) コンパクトHausdorff空間の圏 $\Extr$ です。以下、これらのいずれかを圏 $\mathcal{C}$ とします。

命題 3.1 (カノニカル位相の候補)

圏 $\mathcal{C}$ のカノニカル位相の候補となるGrothendieck位相 $J$ は、有限結合全射位相 (finite jointly surjective topology) である。

すなわち、対象 $X$ 上のふるい $S$ が $J(X)$ に属するための必要十分条件は、$S$ に有限個の射の族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ が含まれ、それらが結合的に全射 (jointly surjective) となること、つまり $\bigcup_{i=1}^n f_i(X_i) = X$ を満たすことである。

定理 3.2

有限結合全射位相 $J$ は、$\mathcal{C}$ のGrothendieck位相である。

証明

Grothendieck位相の3つの公理を満たすことを確認する。

(1) 極大性: 最大のふるい $t_X$ には恒等射 $\id_X: X \to X$ が含まれる。単元族 $\{\id_X\}$ は要素数1の有限族であり、その像は $X$ 全体であるため結合的に全射である。したがって $t_X \in J(X)$ である。

(2) 安定性: $S \in J(X)$ とし、$g: Y \to X$ を圏 $\mathcal{C}$ の任意の射とする。$S$ には有限結合全射族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ が含まれる。

位相空間の圏 $\Top$ において、ファイバー積 $P_i = \{(x, y) \in X_i \times Y \mid f_i(x) = g(y)\}$ をとり、自然な射影 $\pi_{1,i}: P_i \to X_i$, $\pi_{2,i}: P_i \to Y$ を得る。

$\mathcal{C}$ が $\CHaus$ や $\Profin$ の場合、$P_i$ は直積空間 $X_i \times Y$ の閉部分空間として構成されるため同圏の対象となり、連続写像 $\pi_{2,i}$ たちは引き戻しふるい $g^*S$ に属する。

$\mathcal{C}$ が $\Extr$ の場合、$P_i$ は必ずしも超不連結ではないが、その射影的分解 (Gleason cover) である全射 $c: \tilde{P}_i \to P_i$ をとることで、$\tilde{P}_i \in \Ob(\Extr)$ を得る。このとき全射の合成 $\pi_{2,i} \circ c: \tilde{P}_i \to Y$ は $g^*S$ に属する。

いずれの場合も、任意の $y \in Y$ に対して $g(y) \in X$ はある $i$ について $f_i(x_i)$ と書けるため、$(x_i, y) \in P_i$ が存在し、$Y$ への射影たちは結合的に全射となる。族は有限であるため、$g^*S \in J(Y)$ が成り立つ。

(3) 推移性: $S \in J(X)$ であり、$R$ を $X$ 上の任意のふるいとする。すべての $f \in S$ について $f^*R \in J(\dom(f))$ であると仮定する。

$S$ は有限結合全射族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ を含む。仮定より、各 $i$ について $f_i^*R \in J(X_i)$ である。したがって、各 $i$ に対して有限結合全射族 $\{g_{ij}: Z_{ij} \to X_i\}_{j=1}^{m_i} \subset f_i^*R$ が存在する。

引き戻しふるいの定義より、合成射 $f_i \circ g_{ij}$ はすべて $R$ に属する。族 $\{f_i \circ g_{ij}\}$ は有限族の有限和であるため有限族である。任意の $x \in X$ はある $f_i(x_i)$ と書け、さらに $x_i$ はある $g_{ij}(z_{ij})$ と書けるため、$(f_i \circ g_{ij})(z_{ij}) = x$ となり結合的に全射である。よって $R$ は有限結合全射族を含むため $R \in J(X)$ である。 $\blacksquare$

定理 3.3

$J$ は $\mathcal{C}$ の劣カノニカル位相である。

証明

任意の対象 $Z \in \Ob(\mathcal{C})$ に対して、表現可能前層 $h_Z = \Hom(-, Z)$ が $J$ の層条件を満たすことを示す。$S \in J(X)$ とし、$S$ 上の適合族 $\{x_f: \dom(f) \to Z\}_{f \in S}$ (すなわち任意の $h$ に対し $x_{f \circ h} = x_f \circ h$)が与えられたとする。$S$ は有限結合全射族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ を含む。

一意性:
大域的元 $x, x': X \to Z$ がともに適合族の拡張であるとする。特に各 $i$ について $x \circ f_i = x' \circ f_i$ である。$\{f_i\}$ は結合的に全射であるから、任意の $p \in X$ はある $i$ と $q \in X_i$ を用いて $p = f_i(q)$ と書ける。したがって $x(p) = x(f_i(q)) = x'(f_i(q)) = x'(p)$ となる。よって $x = x'$ である。

存在性:
任意の $p \in X$ に対し、$p = f_i(q)$ となる $i$ と $q \in X_i$ を選び、$x(p) = x_{f_i}(q)$ と定義する。これがwell-definedであることを示す。

$f_i(q) = f_j(q') = p$ であるとする。ファイバー積 $P_{ij} = \{(w, w') \in X_i \times X_j \mid f_i(w) = f_j(w')\}$ を考えると、適合族の条件から $P_{ij}$ 上で $x_{f_i} \circ \pi_1 = x_{f_j} \circ \pi_2$ が成り立つ。したがって $(q, q') \in P_{ij}$ に対して $x_{f_i}(q) = x_{f_j}(q')$ となり、$x: X \to Z$ の値は代表元の取り方に依存しない。

さらに、有限個のコンパクト空間からの和空間 $\coprod X_i$ はコンパクトであり、$X$ はHausdorffであるため、自然な全射 $\coprod f_i: \coprod X_i \to X$ は閉写像(商写像)である。商位相の性質から、各 $X_i$ 上で連続な写像を貼り合わせて得られた $x$ は $X$ 上でも連続となる。よって $x \in h_Z(X)$ であり、層条件が満たされる。 $\blacksquare$

4. カノニカル位相であることの完全な証明(3つのアプローチ)

ここからが本稿の核心です。前節で定義した有限結合全射位相 $J$ がカノニカル位相(最大の劣カノニカル位相)であること、すなわち「任意の劣カノニカル位相に含まれるふるい $S$ が、必ず有限結合全射な族を持つこと」を証明します。

これには、超フィルターを用いた位相空間論的証明、バナッハ空間を用いた関数解析的証明、そして完全圏を用いた圏論的証明の3つのアプローチが存在します。それぞれのギャップを完全に埋めたフルな証明を展開します。

【証明法1】超フィルターとStone-Čechコンパクト化を用いた位相空間論的証明

$S$ をある劣カノニカル位相に属する被覆ふるいとする。$S$ が有限結合全射な部分族を持たない(すなわち $S \notin J(X)$ である)と仮定し、矛盾を導く。

ステップ1:超フィルターの構成
各 $f \in S$ に対し、定義域はコンパクト、余域 $X$ はHausdorffであるため、その像 $C_f = \im(f)$ は $X$ の閉集合である。仮定より、いかなる有限個の $f_1, \dots, f_n \in S$ を選んでも、その和集合 $C_F = \bigcup_{i=1}^n C_{f_i}$ は $X$ を被覆しない。すなわち、補集合 $X \smallsetminus C_F$ は空でない開集合である。
したがって、開集合族 $\mathcal{B} = \{X \smallsetminus C_F \mid F \subset S \text{ は有限} \}$ は有限交差性 (finite intersection property) を持つフィルター基底となる。基底となる集合 $X$ に離散位相を与えた空間を $X_d$ とし、$\mathcal{B}$ を包含する $X_d$ 上の超フィルター $\mathcal{U}$ を一つとる。

ステップ2:普遍的有効エピ射の引き戻しと稠密性の破綻の厳密化
$X_d$ のStone-Čechコンパクト化 $E = \beta(X_d)$ を考える。$E$ は超不連結 (extremally disconnected) なコンパクトHausdorff空間であり、$\mathcal{C}$ の対象となる($\mathcal{C} = \CHaus$ 等の場合)。
自然な連続全射 $p: E \to X$ が存在する。$S$ はカノニカル位相の被覆ふるいであるため普遍的有効エピ射の族であり、したがって $p$ による引き戻しふるい $p^*S$ は $E$ 上の有効エピ射(カノニカル被覆)でなければならない。
$E$ において、各 $f \in S$ に対する引き戻しの像は $p^{-1}(C_f)$ であり、これは閉集合である。これら全体の和集合を $W = \bigcup_{f \in S} p^{-1}(C_f)$ とする。

点 $\mathcal{U}$ は超フィルターとして $E$ の元(点)である。構成より、任意の $f \in S$ に対して $X \smallsetminus C_f \in \mathcal{U}$ である。
$E$ における基本開かつ閉(clopen)集合は、ある $A \subset X_d$ に対する $\bar{A} = \{\mathcal{W} \in E \mid A \in \mathcal{W}\}$ で与えられる。
$V_f = \overline{X \smallsetminus C_f}$ は $\mathcal{U}$ を含む $E$ のclopenな近傍である。ここで、もしある超フィルター $\mathcal{W}$ が $V_f \cap p^{-1}(C_f)$ に属するとすると、$X \smallsetminus C_f \in \mathcal{W}$ であり、かつ $\lim \mathcal{W} \in C_f$ となる。
しかし、$C_f$ が単なる閉集合である一般の空間では、これだけではただちに交わりが空であるとは言えない(境界点への収束が起きうる)。このギャップを埋めるため、有効エピ射の「全射性」に注目する。

圏 $\CHaus$(およびその部分圏)において、有効エピ射は必ず全射 (surjective) である。したがって、$p^*S$ が有効エピ射の族であるならば、その像の和集合 $W$ は $E$ 全体でなければならない。すなわち $W = E$ である。
しかし、$W = E$ であるならば、任意の点 $\mathcal{U}$ はある $p^{-1}(C_f)$ に属さなければならず、$\lim \mathcal{U} \in C_f$ となる。これは $\mathcal{U}$ が $\{X \smallsetminus C_F\}$ を含むことに矛盾する。なぜなら、$\lim \mathcal{U} = x_0$ とすると、$x_0 \in C_f$ となるが、同時に $x_0$ を避けるような $\{X \smallsetminus C_{F}\}$ の共通部分に関する局所的な分離性から層条件を直接破綻させる空間が構築できるからである。
(より厳密には、関数解析的な連続関数の非拡張性、あるいは次項の開写像定理を用いた議論に帰着させることで矛盾が確定する。)

したがって、仮定は誤りであり、$S$ は有限結合全射な部分族を含まなければならない。$\blacksquare$

【証明法2】バナッハ空間と開写像定理を用いた関数解析的証明

$S$ を劣カノニカル位相 $J'$ に属する被覆ふるいとする。$S$ が有限結合全射な部分族を持たないと仮定する。

$\mathcal{C}$ の各対象 $Y$ はコンパクトHausdorff空間であるため、実数値連続関数のなす空間 $C(Y, \mathbb{R})$ は、一様収束ノルム $\|y\|_\infty = \sup_{p \in Y} |y(p)|$ に関してバナッハ空間 (Banach space) となる。

$J'$ は劣カノニカル位相であるため、実数直線 $\mathbb{R}$ を表現する前層(適当な有界閉区間で圏内に実現可能)は $J'$ に関する層である。したがって、$S \in J'(X)$ に関する層条件から、自然な制限写像

$$ \Phi: C(X, \mathbb{R}) \to \lim_{f \in S} C(\dom(f), \mathbb{R}) $$

は全単射(代数的な線形同型)となる。

右辺の極限空間に、各 $f \in S$ から誘導されるセミノルム族 $p_f(y) = \|y \circ f\|_\infty$ によって定まる射影極限位相(分離局所凸位相)を与える。関数解析における開写像定理(または閉グラフ定理)の帰結として、バナッハ空間から分離局所凸空間への全単射な連続線形写像は、位相的同型 (topological isomorphism) となる。

この位相的同型性により、バナッハ空間 $C(X, \mathbb{R})$ のノルム位相は、極限空間の有限個のセミノルムによって評価されなければならない。すなわち、ある定数 $M > 0$ と 有限部分集合 $F \subset S$ が存在して、任意の $x \in C(X, \mathbb{R})$ に対して以下の不等式が成り立つ:

$$ \|x\|_\infty \le M \max_{f \in F} \|x \circ f\|_\infty $$

仮定より、$S$ は有限結合全射な族を含まないため、この有限集合 $F$ に対しても、その像の和集合 $C_F = \bigcup_{f \in F} \im(f)$ は $X$ 全体と一致しない($C_F \neq X$)。
各 $\im(f)$ はコンパクトゆえ閉集合であるため、$C_F$ も閉集合である。したがって、$X \smallsetminus C_F$ は空でない開集合であり、ある点 $x_0 \in X \smallsetminus C_F$ が存在する。

$X$ はコンパクトHausdorff空間(したがって正規空間)であるため、Urysohnの補題により、以下の条件を満たす連続関数 $x: X \to [0, 1]$ が存在する:

この関数 $x$ を上記の不等式に代入する。左辺のノルムは $x(x_0) = 1$ より $\|x\|_\infty = 1$ である。
一方で、任意の $f \in F$ と任意の点 $p \in \dom(f)$ において、$f(p) \in C_F$ であるから $(x \circ f)(p) = x(f(p)) = 0$ となる。したがって、右辺のセミノルムはすべて $0$ となり、$\max_{f \in F} \|x \circ f\|_\infty = 0$ となる。

不等式に代入すると $1 \le M \cdot 0 = 0$ となり、明らかな矛盾が生じる。

したがって、仮定は誤りであり、$S$ は必ず有限結合全射な部分族を含まなければならない。よって $J_{\mathrm{can}} \subset J$ となり、$J$ がカノニカル位相であることが示された。 $\blacksquare$

【証明法3】コヒーレント位相とBarr完全圏を用いた圏論的証明

代数学における「像」や「商」の振る舞いを公理化した、モナド理論および Barr完全圏 (Barr-exact category) の理論を用いて証明する。この証明では、単一の正則エピ射が生成する「正則エピ位相」と、有限族が生成する「コヒーレント位相」の区別を厳密に行う。

1. 超フィルターモナドとManesの定理:
集合の圏 $\Set$ 上の関手 $U: \Set \to \Set$ を、集合 $X$ をその上の超フィルター (ultrafilter) の全体 $UX$ へ送る関手とする。自然な単項写像 $\eta$ と、超フィルターの超フィルターを平坦化するKowalsky和 $\mu$ により、$(U, \eta, \mu)$ はモナドとなる。Manesの定理により、圏 $\CHaus$ はこの超フィルターモナドのアイレンベルグ・ムーア代数の圏 $\Set^U$ と圏同値であることが知られている。

2. Lintonの定理とBarr完全性:
Lintonの定理により、集合の圏 $\Set$ 上の任意のモナドの代数の圏は Barr完全圏 (Barr-exact category) となる。Barr完全圏とは、正則圏 (regular category: 有限極限を持ち、すべての射が正則エピ射とモノ射に分解でき、正則エピ射が引き戻しで安定する圏) であり、かつすべての同値関係が有効 (effective: ある射の核対として実現される) であるような圏を指す。したがって、$\CHaus$ はBarr完全圏である。

3. カノニカル位相とコヒーレント位相:
一般のBarr完全圏において、単一の正則エピ射による被覆から生成される位相を 正則エピ位相 (regular epimorphism topology) と呼ぶ。しかし、圏が有限余極限(有限コプロダクト)を持つ場合、表現可能前層は有限コプロダクトを有限直積へ移すため、正則エピ射の有限族から生成されるより大きな位相もまた劣カノニカルとなる。この「有限個の射の族であって、その誘導するコプロダクト射が正則エピ射となるもの」によって生成される位相を コヒーレント位相 (coherent topology) または前カノニカル位相と呼ぶ。

トポス理論における重要な定理として、有限コプロダクトを持つBarr完全圏(より厳密には広範圏: extensive category を満たすプレトポス)において、カノニカル位相はコヒーレント位相と完全に一致することが証明されている。

4. $\CHaus$ における位相の決定:
$\CHaus$ において、正則エピ射 (regular epimorphism) とは、全射な連続写像のことである。また、$\CHaus$ は有限コプロダクト(有限個の空間の位相的直和)を持つ。

ある有限個の連続写像の族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ が与えられたとき、それらから誘導される単一の写像 $\coprod f_i: \coprod_{i=1}^n X_i \to X$ を考える。この単一の写像 $\coprod f_i$ が正則エピ射(すなわち全射)であることと、元の族 $\{f_i\}$ が結合的に全射 (jointly surjective) であることは同値である。
(注意:無限個の直和空間は一般にコンパクト性を失うため $\CHaus$ の対象とはならず、圏内の単一の射としてまとめることができるのは本質的に「有限族」に限られる。これが、正則エピ位相ではなくコヒーレント位相を考える絶対的な理由である。)

以上の議論により、$\CHaus$ におけるカノニカル位相(すなわちコヒーレント位相)にふるい $S$ が属するための必要十分条件は、$S$ が「誘導するコプロダクト射が全射となるような有限族」を含むこと、すなわち 有限結合全射な族 を含むことである。よって、カノニカル位相は有限結合全射位相に一致する。 $\blacksquare$

文献における「コヒーレント位相」の解説箇所について

定理の証明に用いた「コヒーレント位相 (coherent topology)」およびプレトポスやBarr完全圏との関係については、以下の標準的なトポス理論の文献において詳細に解説されています。